シュランメル

一体何それ?という感じのタイトルですが、シュランメル “Schrammel” というのは

ウィーン特有の音楽の一つで、広義には主にホイリゲ(郊外にあるワイン酒場)で

歌われ演奏される音楽のことです。本来はシュランメル兄弟の作品を指すのですが。

ま、言うなれば19世紀の流行歌ですね。ただ、これってウィーン方言(要は訛り)で

歌われるため、歌詞を読んでも何が書いてあるかサッパリ判らないと言うドイツ人

(ウィーンはオーストリアの首都です)も結構居ると思います。と言っても表音表記の

規則は一応あるので、口に出して読んでみると何となく判ったりします。

 

先週依頼を受けたシュランメルの翻訳が先ほど終わりましたので、ひょっとしたら

後の人の役に立つかもしれませんし、折角だから幾つかアップしておきます。

一応自分はウィーン方言+音楽学の分野においては、日本で数少ない専門家と

思いますので(笑)、この辺の仕事があれば随時承ります!

 

※原詩は表記が非常に面倒臭いので日本語訳のみ(苦笑)。

※著作権は自分にありますので、無断使用は厳禁なりよ。

 

“Mei’ Muatterl war a Wienerin”   「私の母はウィーン子だった」

今でも良く思い出す
まるで昨日のことのように
良く晴れた日曜の朝
母は言った

早くいらっしゃい
お顔とお手々を洗いましょう
あなたの巻毛もとかさなくっちゃ
今日はカーレンベルクに初めて連れてって上げるわ

丘の上で母は私に素晴らしい眺めを見せ
頭を撫でながら笑って言った

ほら、あれがシュテファン大聖堂
あれが青きドナウの流れ
そこの沢山の家々が並んでいるのが
あなたの生まれた町ウィーンよ
この美しい町を誇りに思いなさい
私もそうしてきたのよ

私の母はウィーン子だった
だから私もウィーンを愛する
母は私の人生に愛することを教えてくれた
この世界でただ一つの輝ける町ウィーンに対する愛を

“Einmal macht’s an Plumpser”   「でっかい物音がしたら」

でっかい物音がしたら
それでおしまい
下の階には誰もいやしないし
人生は途中駅のようなもの
ちょっと停まってまた出発

でっかい物音がしたら
それでおしまい
そんなに残念でも怖くもないよ

目が覚めたらきっと聖ペテロ様がおっしゃる
良く来たねって
ここは良いところだよってね

せいぜいあんたは楽しく生きなよ
ワインをゆっくり楽しみながら
どのみち世界は回っていくよ
ま、そんなもんだ

“Vormittags bin i im Wirthaus”   「午前中は飲み屋に」

俺は気の良い男
ワインは好きだが
のんびりやるよ
でもうちのかみさん
それが気に入らないらしく
色々邪魔をする

午前中は飲み屋に
午後はワインと一緒
夜は家じゃなくて
ホイリゲに帰るよ
かみさんは何か言いたいらしく
机に書き置き残してるけど
俺はうちにゃ帰らないから
机の上のゴミくずだ

もし病気になったら
かみさんの言うこと聞くかもな
まぁせいぜいガミガミ言っとくれ
どうせ誰も俺を止められやしないさ

“Kinder, setz’ ma uns doch öfter z’samm'”   「みんな、もっと集まって飲もうぜ」

みんな、もっと集まって飲もうぜ
誰もどれだけ長く生きられるかなんて判りゃしねぇ
時間は俺らのことなんか気にしちゃいない
人生の目標なんて一体どこにあるのやら

だからもっとしょっちょう集まらなきゃ
誰もどれだけ長く生きられるかなんて判りゃしねぇ
俺らの誰かが予言者だったら別だけどな
だからもっとしょっちょう集まろうって

人間ってのは孤独になったらすぐに心が病んじまうよ
そんでもってすぐにコロっと逝っちまうね
でもみんなで集まればもう問題なしだ
なぁお前さんたち
みんなで飲めば人生はもう淋しくなんかない
もう最高の気分だね